20211127
エウレカとアマミズのはしご
『共同体』と聞いてみなさん真っ先に何を思うだろう。わたくしの脳裏に浮かぶのは、今住んでいるお家のことである。わたしは現在友人ふたりと一緒に暮らしている。3人それぞれが独立していてまことに自由人。全く違うルーツや性格を持っており、専門分野も異なっていて、家で一緒になるタイミングもそんなにない。でもわたしたちは、ふとしたとき、すっと気持ちの集まる不思議な共同体である。
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福岡はエウレカにて、牛島智子さんの展示「炭素ダンスでエウレカ」を観に行っていた本日。フライヤーにワークショップの案内があり、昨晩問い合わせてみたら空きがあるとのことだった。せっかくなので参加させていただくことに。
ワークショップは、「踊る人を見る、記憶のシャッターを押す、気配を聞きながら描く」というタイトルがついている。内容は、展示会場でふたり組ダンスユニット・ハエちちが踊る中、参加者たちがそれぞれ一枚の絵を完成させるというもの。参加者の体験は“デッサン”という名目だが、モデルである踊り手の正確な描写が目的ではなく、その場の印象をおおらかにつかんで形にすることが大事なようだ。智子さんが会場のとなりの公園で録った音や、叩くと長い余韻がする器、くしゃくしゃ喋る和紙の作品、オルゴールなど音の仕掛けもあり、ワークショップがすすむうちに視界がひろくやわらかくなってとても心地がよかった。
作品・ダンス・描き手をただ単体とするのではなく、それぞれが独立して成立し、かつ反応し合っている「共同体」としてとらえるのがすごくおもしろいのだと、ワークショップの休憩中に話す智子さん。和紙の作品裏面のキャプションの一部に「あなたの生活に作動する私の暴力はあなたの脳裏に入り込むこと」とある。パワフルな作品の背後でいたずらっぽく笑うお姿が、頭の中でひかった気がした。
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夕方、もうひとつ展示を観に行った。会場に入ると髪を洗うひと、洗われるひとがいる。美容院での展示だったのだ。大丈夫かなと思いながら作品を鑑賞していると、作家さんが戻ってきた。「はじめまして。フライヤーがあんまり魅力的で、絶対おもしろいひとだと思ってきたんです…」「なんと、そうでしたか!どうぞどうぞ」
わたしが観にきたのは、大澤弘輝さんの「第一回大澤弘輝君色々展示大会」という展示。その名の通り、小さな空間に絵や音、立体、それに映像…実に色々な作品が、気持ちよくのびのびしている。どんなふうにしてここに現れたの?と作家さんに直接尋ねることができるのが、個展の素敵なところ。お話を伺っていると楽しくなり、ついついわたくしもそこで髪を切ってもらうことにした。「美容院だけど、髪を切る用のないひとも来れて、いろいろ起こるといいなと思っていて」美容師さんが話す言葉の中にも、なんだかひそかな共同体のにおいがしている。
軽やかな髪にどんぐりを連想の秋
光る目玉の指輪をもらって、帰路