20240206

https://on.soundcloud.com/GrjEcuLNKU48rv6i9

しまんとの新しい暮らしは楽しくも過酷だ。

仕事は毎日試されているようだし、お家もまだまだ住みやすさから遠い。環境整備もなかなかスッキリと言えず、お金も時間も限られていて、音楽や表現の話がゆったりできる友達もいない。仲良くなれるかなと思った川は、わたしからみたらスケールが大きすぎるように思われ、お姉さんのように思っていた三隈川からすれば巨大な龍と対峙しているような、話せるかわからないなと思う感覚がある。

ここ数日、楽器が思うように吹けない日が続いたことから、わたしは狙うようになっていたかもしれない。今日は、何もせずひたすら待ての仕掛けがあったから、考えるより先に「なら、ここに楽器を持ってきて吹いていいですか」と口にしていた。そのときのことを考えるといまも泣きそうになる。わたしは、楽器を吹かないと、音楽をやらないとほんとうに内側から腐って潰れてしまうのだ。音楽をやることはわたしの苦痛への手当てや慰めであり、音楽をやらないことは、身体や精神があるかぎりとても耐えられない。本当なのだ。

あっけんからんと「いいじゃん、吹いていいよ」のお返事は、晴れて光に満ちたこの街の空の色。がらんとした夕暮れ時のエントランスに、絵の具のチューブから滲み出すようにして、ほつほつとホルンの音を浮かべる。これだけ天井が高ければ、何日吹いていなくても、唇が切れて割れていてもまったく怖くない。灰色がかった新しい建物の匂いに混ざって、わたしの不器用な音が伸びてひろがっていくのが嬉しい。神様、わたしに音楽をさせてください。先月末、わたしの演奏を聴き描写的だと言った踊り手の言葉をふと思い出す。邪魔にならないように、しかし楽しさを図形を描くようにそのまま音を続ける。